職場から危険物取扱者の資格を求められるなどして取得しようと思ったとき、気になるのは試験の難易度ではないでしょうか。
勉強から離れて久しい社会人の方は試験を受けるとなると「難しいのでは・・・?」と思われる方もいるかもしれません。
結論として、危険物取扱者は難易度の高い資格ではありません。
危険物取扱者は化学系の国家資格ですが、要点を押さえて勉強すれば文系出身の方でも2~3ヶ月程度の勉強で十分に合格できる資格です。
また、きちんと勉強すれば1ヶ月程度の勉強期間で合格することも不可能ではありません。
危険物取扱者は難易度もそれほど高くなく、汎用性も高いことから自己研鑽などで「何か資格を取ろうと思うけど何を取ろうかな」と思われる方が最初の資格として選ぶことも多く、人気が高い特徴があります。
そんな危険物取扱者についてはこちらの記事に詳しくまとめてみましたので、ご参考いただければと思います。
ここでは危険物取扱者の中でも最も難易度の高い甲種危険物取扱者試験に約1ヶ月半の勉強期間で一発合格した私が、危険物取扱者試験に合格するための勉強方法や勉強時間についてご紹介したいと思います。
試験科目と合格ライン
危険物取扱者試験は「甲種」「乙種」「丙種」の3つの区分があり、それぞれの試験の難易度は違いますが、科目はだいたい同じです。
合格ラインはすべての試験で1科目6割以上となっています。
3科目の総合点が6割以上ではないので要注意です。
甲種危険物取扱者試験の試験科目
〇 危険物に関する法令(15問)
〇 物理学および化学(10問)
〇 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(20問)
乙種危険物取扱者試験の試験科目
〇 危険物に関する法令(15問)
〇 基礎的な物理学および基礎的な化学(10問)
〇 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
丙種危険物取扱者試験の試験科目
〇 危険物に関する法令(10問)
〇 燃焼および消火に関する基礎知識(5問)
〇 危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法(10問)
試験によっては試験科目の免除制度などもあります。
詳しくはこちらの記事にまとめていますので、ご参考いただければと思います。
危険物取扱者試験のための勉強方法
「甲種」「乙種」「丙種」の勉強方法は基本的には同じ
「甲種」「乙種」「丙種」でそれぞれ難易度は違いますが、科目はだいたい同じなので基本的な勉強方法も同じです。
特に「危険物に関する法令」はすべての試験区分で出題されますので、その勉強方法はまったく同じになります。
自分が文系タイプか理系タイプかで勉強のアプローチは若干変わってきますが、どちらのタイプであっても次に解説するポイントを押さえて勉強するのが良いでしょう。
試験に合格するために満点を取る必要はない
危険物取扱者試験の合格ラインは「1科目6割以上」です。
つまり満点を取る必要はないわけですが、これが何を意味するのかというと、出題範囲の一部を最初から捨てることができるということです。
合格ラインは1科目6割以上ですので、科目ごと捨てることはできませんが「勉強に時間がかかる内容」や「苦手な内容」を最初から捨てて、確実に点が取れる内容を強固にしようという考えです。
危険物取扱者試験は出題範囲がそれなりに広いのに対し、出題される問題数が少ない傾向があります。
つまり特定の内容に対して1~2問程度しか出題されないため「勉強に時間がかかりそうな内容」や「苦手な内容」を最初から勉強しなかったとしても損失は少ないということです。
また、試験はマークシート方式なのでカンで回答しても正解する可能性もあります。
この方法のメリットは、苦手な内容を辛い思いをしながら勉強してモチベーションが下がるのを防いだり、勉強期間を短縮できることです。
一方で、あれもこれも苦手といって捨てる内容を多くしすぎないことも重要です。
文系タイプと理系タイプでは勉強方法が違う
危険物取扱者試験に不合格になるパターンは文系タイプの方と理系タイプの方で傾向が異なります。
そのため、自分のタイプに合わせて重点的に勉強する科目を選ぶのが良いでしょう。
文系タイプの方
文系タイプの方は「法令」と「性質・消火」は合格ラインを越えたけれど「物理・化学」がギリギリ合格ラインに届かなかったので不合格になった、というケースが多いです。
特に「物理・化学」は10問しか出題されないので、間違えることが許される問題は4問しかありません。
そのため文系タイプの方は「法令」と「性質・消火」の勉強をしつつ「物理・化学」をよりしっかりと勉強することが必要となります。
「物理・化学」の問題構成はおおまかに言って「計算問題」と「計算問題以外」の2つです。
「計算問題以外」は暗記で対策可能なので確実に正解できるように勉強しつつ、「計算問題」はすべての出題パターンは無理でも1パターンくらいは解けるようにしておくのが良いでしょう。
理系タイプの方
理系タイプの方は「物理・化学」と「性質・消火」は合格ラインを越えたけれど「法令」が合格ラインに届かなかったので不合格になった、というケースが多いです。
「物理・化学」は基本的に学校で勉強したことがある内容が多いため、人によってはまったく勉強せずとも全問正解できることもあります。
「性質・消火」に関しても物質の性質などを知っていると解ける問題も多いため、少し勉強すれば合格ラインに届きます。
一方で「法令」はほとんどの方が初めて勉強する内容です。
理系タイプの方の中には暗記科目が苦手という方も一定数いるため、「物理・化学」や「性質・消火」のように少し勉強した程度だと合格ラインに届かないことがあります。
そのため、理系タイプの方は「物理・化学」や「性質・消火」でケアレスミスをしないように注意しつつ、「法令」をよりしっかりと勉強することが必要となります。
「法令」はポイントを押さえればそれほど難しくなく出題内容もおおよそ決まっているので、過去問や市販の問題集などの出題傾向をしっかり分析し、勉強しておくのが良いでしょう。
危険物取扱者試験に合格するための勉強時間
危険物取扱者試験に合格するために必要な勉強時間は目安として「甲種」で約100~150時間、「乙種」で約50~100時間ほどと言われています。
しかし当然ですが、人によって基礎学力が違うため必ずしもこの限りではありません。
重要なのは「〇ヶ月の勉強で合格」ではなく「〇〇時間の勉強で合格」ということ
よく「〇ヶ月の勉強で合格しました!」といった謡い文句を目にしますが、重要なのは何ヶ月勉強したかではなく何時間勉強したかということです。
1日に1時間の勉強を1ヶ月(30日)やった場合
1時間×30日=30時間
1日に3時間の勉強を1ヶ月(30日)やった場合
3時間×30日=90時間
当然ですがこのように大きな差が生じます。
一方で、これは言い換えると1ヶ月の勉強期間で合格しようと思うなら、限られた時間の中でたくさん勉強すれば良いということでもあります。
文系タイプの方は理系タイプの方のプラス50時間程度の勉強をしておくのが望ましい
危険物取扱者は化学系の資格なので、その試験内容も化学に関する内容が多く出題されます。
そのため理系タイプの方が学校などで勉強したことがある内容を一から勉強しないといけない場合があります。
試験に確実に合格するためにも理系タイプの方以上に「物理・化学」の勉強をしっかりとしておくことが望ましいです。
巷で聞こえる「甲種危険物取扱者に1ヶ月の勉強で合格した」という話の正体
甲種危険物取扱者に1ヶ月の勉強期間で合格することは可能
甲種危険物取扱者に合格した人の勉強期間を調べてみると「1ヶ月の勉強で合格した」という話を見かけます。
結論から言って、1ヶ月の勉強期間で甲種危険物取扱者試験に合格することは可能です。
「でもそれって頭が良い人だけでしょう?」と思う方もいらっしゃるかもしれません。
しかし、勉強時間が短かったり、基礎学力が低めの方でも「甲種危険物取扱者試験に1ヶ月の勉強で合格した」というケースが存在します。
この話の正体は「乙種危険物取扱者を取得してから甲種危険物取扱者を取得した」というケースです。
では、乙種危険物取扱者を取得してから甲種危険物取扱者を取得することがなぜ有利なのか説明しようと思います。
合格したケースには「正攻法」と「裏技」の2パターンが存在する
裏技というと少し語弊があるかもしれませんが「1ヶ月の勉強期間で甲種に合格した」を謡い文句にするなら裏技といっても差し支えないだろうということで、ここでは裏技とさせていただきます。
甲種危険物取扱者試験に1ヶ月の勉強期間で合格したケースには正攻法と裏技の2つのパターンがあります。
正攻法
最初から甲種を受験し、出題範囲を一から勉強する(受験資格があることが前提)
裏技
乙種危険物取扱者を取得を取得してから甲種を受験する
甲種危険物取扱者試験は乙種危険物取扱者を取得してから受験するほうが勉強時間を短くすることができます。
なぜ勉強時間を短くすることができるのかは以下のとおりです。
乙種危険物取扱者を取得してからのほうが勉強時間が短くなる理由
〇 乙種危険物取扱者を受験するときに一部の範囲を勉強している(取得した類の範囲)
〇 「法令」に関しては甲種と乙種でほとんど違いがない
このように乙種危険物取扱者を取得し受験資格を手に入れてから甲種危険物取扱者を受験する場合、事前に一部の範囲を勉強していることになります。
そのため、すでに勉強済みの範囲を割愛したり、軽く勉強する程度で済ませることで勉強時間が短くし、結果として「甲種危険物取扱者試験の勉強期間」は1ヶ月で合格したというケースが存在します。
若干屁理屈のように感じなくもないですが、このようなカラクリで「甲種危険物取扱者試験に1ヶ月の勉強期間で合格した」と言われている方も一定数存在します。
しかし、受験資格があるのは大前提となりますが、甲種危険物取扱者試験は正攻法で勉強しても1ヶ月の勉強期間で合格することは可能です。
正攻法で合格できる方の傾向
〇 最初から基礎学力が高い「高学歴タイプ」(旧帝大出身など)
〇 物理や化学が得意な「理系タイプ」
〇 期間は1ヶ月でも毎日数時間以上勉強するなど、きちんと勉強をしている
理系出身者限定の話になりますが、受験資格があればどれか1つでも当てはまる傾向がある方は最初から甲種を受験しても1ヶ月程度勉強するだけで試験に一発合格することも可能です。
実際私が受験したときも勉強期間は1ヶ月半ほどでしたが、乙種を取得せず最初から甲種を受験して一発合格することができました。
私自身は高学歴でもなければ物理や化学が得意というタイプでもないので、旧帝大出身などの高学歴な方や物理や化学が得意な方は1ヶ月の勉強でも十分に合格が見込めると思います。
では最後に、私が実際に甲種危険物取扱者試験を受験したときのお話をご紹介したいと思います。
私が試験を受けるためにやった勉強方法と勉強時間
乙種を取得せず最初から甲種危険物取扱者を受験した
私は理系出身で受験資格がありましたので、乙種を取得せず最初から甲種を受験しました。
出願は甲種の場合、電子申請ができないので消防本部へ行き、願書を入手しました。
書店でテキスト・問題集を購入して独学で勉強した
試験勉強するにあたり、私は2冊の問題集を購入して独学で勉強しました。
ネットには独学でも十分合格できるとあったので、まず書店へ行き、テキスト&問題集の構成になっている本を1冊購入して勉強を始めました。
1冊目は1ヶ月弱で一通りの勉強が終わりましたが、少し不安があったので追加で今度は問題集に特化した構成の本を1冊購入して勉強を続けました。
ちなみに私が購入して勉強したテキスト・問題集はこちらになります。
「らくらく突破 甲種危険物取扱者 合格テキスト+問題集」はタイトルのとおりテキストと問題集がセットになったタイプの書籍となっています。
各単元ごとにまず「内容の解説(テキスト)」があり、その後のページに「簡単な練習問題(問題集)」が載っており、問題でわからないところがあってもすぐ前のページに戻って内容を確認しながら勉強が出来る構成となっています。
この書籍では「単元①の内容の解説」⇒「単元①の練習問題」⇒「単元②の内容の解説」⇒「単元②の練習問題」のようにページが進んでいきます。
そして、いくつかの単元の勉強が終わると、複数の単元の問題をまとめた「演習問題(例 単元①~④までの範囲)」が載っており、これまで勉強した内容をきちんと理解出来ているか確認する流れとなっています。
このように「危険物に関する法令」「基礎的な物理学および基礎的な化学」「危険物の性質ならびにその火災予防および消火の方法」の順にページが進んでいき、すべての単元を勉強し終わった最後に「模擬試験(試験範囲のすべて)」があり、これまでの総仕上げをする流れとなっています。
一方で「一発合格!甲種危険物取扱者試験<ここが出る>問題集」は各単元ごとの問題が順に載っており、終盤に模擬試験が6種類用意されている実践的な書籍となっています。
私は「らくらく突破 甲種危険物取扱者 合格テキスト+問題集」をメインに内容を勉強した後、「一発合格!甲種危険物取扱者試験<ここが出る>問題集」できちんと内容を理解しているか確認してから、本番の試験に臨みました。
勉強時間は約80~100時間(期間は約1ヶ月半)
試験まで1ヶ月半ほどあったので、試験日から逆算してスケジュールと方針を決めて勉強をしました。
平日は最低でも絶対に1時間は勉強する
これは絶対に守るようにしていました。
「学問に王道なし」「ローマは一日にして成らず」という言葉を胸にどれだけ疲れていても必ず毎日勉強し、習慣的に取り組むようにしました。
また、余裕がある日はプラス1~2時間ほど勉強するようにしていました。
土日は3時間~半日は勉強する
土日は平日より時間的余裕があったので、集中的に勉強するようにしていました。
当然、余裕があればプラス1~4時間ほど勉強していました。
勉強内容はテキストの単元毎に区切り、必ずキリが良いところまでやる
これも絶対に守るようにしていました。
中途半端なところで手を止めて、内容を自分の中に落とし込めなかったり、忘れたりするのを防ぐことを目的として必ずキリが良いところまで勉強するスタンスでした。
日によって勉強する時間に差はありましたが、上で述べたポイントを守りつつ、勉強開始から1ヶ月弱でテキスト&問題集を1冊分勉強しました。
その後、1冊目のテキスト&問題集を見返しつつ、2冊目の問題集の問題を解きながら勉強を続けました。
そして、1ヶ月半ほど勉強した頃に試験に挑み、結果として一発で甲種危険物取扱者試験に合格することができました。
まとめ
ここまで危険物取扱者試験の勉強方法と勉強時間についてご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
危険物取扱者は汎用性が高く、さまざまな施設で活用されています。
そのため、難易度も合格率に見えるほど難しいものではなく、きちんとポイントを押さえて勉強をすれば普通に一発合格することもできる資格です(言い換えるとほとんど勉強せずに試験を受ける人が多い資格ということです)。
また、化学系の資格だから理系タイプでないと難しいということもなく、中学・高校程度の化学の知識があれば十分に試験に合格することができます。
危険物取扱者試験の試験内容や出願方法などはこちらの記事に詳しくまとめましたので、併せてご参考いただければと思います。
本内容がこれから危険物取扱者の取得を目指す方のご参考になれば幸いです。
「危険物に関する法令」の対策例
「法令」の科目で出題される「指定数量」はそのほかの内容と比べて複雑です。
法令は甲種と乙種では6問まで捨てることができるので、最初から捨てるのも1つではないかと思います。
一方で、甲種を受験される方は「第4類の指定数量」だけを勉強し「そのほかの類の指定数量」はすべて捨てるといった感じでも良いでしょう。
出題数が限られている中で指定数量が出る場合、マイナーな「第4類以外」よりメジャーな「第4類」が出題される可能性が高いと思われます。
しかし「第4類以外」が出る可能性もゼロではありませんので、出題されたら諦めてカンに頼りましょう。