【経験者が語る】バイオベンチャーってどんなところ?

科学
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バイオベンチャーと呼ばれる企業をご存じでしょうか。

言葉は聞いたことがあるけど、正直よくわからない!なんとなく最先端のこととかやっていてすごそう!と思われている方が多いのではないでしょうか。

バイオベンチャーは医療や生命科学といった分野の研究・開発を行い、それらを産業へシフトさせ、社会に貢献している企業です。

この分野はアメリカなどでは上手くいっていますが、日本ではまだまだ軌道に乗っていないところが多いというのが実情です。

実際に働くという点については、「はっきりと向いている人」と「まったく向いていない人」がいます。

ここではバイオベンチャーで働いてみたいけど、実際どうなんだろう?と思っている学生さんや社会人、家族やパートナーがバイオベンチャーで働いているけど、将来とか大丈夫なの?と思われている方に実際にバイオベンチャーで働いた経験のある私が本業界についてご紹介したいと思います。

 

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バイオベンチャーってなに?

バイオベンチャーの定義

① バイオテクノロジーに関連した事業

② 中小企業基本法が定義する中小企業のうち、従業員数関する条件に該当する

③ 設立から20年未満

④  研究開発、受託研究サービス、製造、先端科学関連コンサルティングなどを主な事業とする

バイオベンチャーは医療や生命科学といった分野の研究・開発を行い、それらを産業へシフトさせ、社会に貢献している企業です。

言葉の成り立ちは「バイオ(生命・生物)」+「ベンチャー(新規の事業に取り組む)」から来ています。

 

バイオベンチャーの特徴

〇 事業内容は大学などで研究されていたもの

〇 最先端かつ独創性の高い技術を持っている

〇 社長は大学教授などの研究者出身が多い

事業内容は大学や理化学研究所のような公的研究所で研究されているもので成果が挙がった技術がベースとなります。

大学や公的研究所では企業では実施しにくい基礎研究も盛んに行われていますので、中小企業でも最先端かつ独創性の高い技術を持っている企業が多いです。

また、こうした成り立ちから社長などの経営陣は優秀な研究者であることが多いのも特徴です。

 

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日本のバイオベンチャーの実情

〇 ほとんどの企業がアーリーからミドルステージ(赤字経営

〇 ミドルステージから上場する企業が出てくる

〇 数は少ないが、レイターステージの企業も存在する(黒字経営)

日本では2019年時点で黒字経営を続けている企業はまだ少ないという実情があります。

ここで日本のバイオベンチャーは現時点でどのような段階にあるのかをスタートアップから黒字化するまでの流れを交えて解説します。

バイオベンチャーの事業黒字化までの流れ(イメージ)

① 大学や公的研究所などで研究が行われる

② 研究の成果が出る

③ 成果で得られた技術をベースに起業準備をする

④ 起業し、事業を整備する

⑤ 国から補助金をもらい、事業化・黒字経営を目指す(起業から10年くらいは赤字が続くことが多い)

⑥ 黒字転換に成功する

⑦ 従業員を増やし、ベンチャー脱却となる

 

各段階は以下のように呼ばれます。

①~② …… 基礎・応用研究

  ③ …… シードステージ

  ④ …… アーリーステージ(スタートアップステージ)

  ⑤ …… ミドルステージ

⑥~⑦ …… レイターステージ

 

日本のバイオベンチャーの実情

日本のバイオベンチャーの多くはシードステージからミドルステージに該当します。

しかしながら、この段階で倒産する企業がたくさん存在します。

一方で、ミドルステージから上場する企業が出てきます。事業の黒字への道筋が見えてきてから上場することで補助金のほかに投資家から資金を調達し、多額の資金による研究開発を進めて黒字化を目指す流れとなります。

上場している企業(ミドルステージ)

リプロセル(JASDAQ・グロース)

ジャパン・ティッシュ・エンジニアリング (JASDAQ・グロース)

サンバイオ(マザーズ)

ヘリオス(マザーズ)  など

現時点では、レイターステージまで到達した企業はまだまだ少ないですが、しっかりと黒字経営している企業もいくつか存在します。

上場している企業(レイターステージ)

タカラバイオ(東証1部)

ペプチドリーム(東証1部)  など

 

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日本とアメリカの違い

アメリカのバイオベンチャー

アメリカではバイオベンチャーに多額の資金が投資されています。

少し前のデータになりますが、アメリカでは2017年に約100億ドル(約1.1兆円)がバイオベンチャー分野に投資されたのに対し、日本では約3憶ドル(約330億円)しか投資されていません。

また、米国のバイオベンチャーの時価総額は6000億ドルを越えるのに対し、日本のバイオベンチャーの時価総額は約200億ドル程度であると言われています。

 

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バイオベンチャーで働く「メリット」と「デメリット」

メリット

〇 いろいろな仕事を経験できる

〇 トップとの距離が近いので、意思決定が早い

〇 大企業と比較して中途にも門戸が開かれている

デメリット

〇 新人教育や研修に期待できない

〇 組織制度、福利厚生が不完全

〇 不安定(いつ倒産してもおかしくない)

 

バイオベンチャーで働くメリット

バイオベンチャーで働く大きなメリットは、いろいろな仕事が経験できることです。

大企業では人がたくさんいて各年代の層が厚いので大きなプロジェクトになればなるほど経験豊富な人物が携わることになります。

また、部門がしっかりと出来上がっているので担当する仕事は細分化された一部分となり、全体像が掴みにくかったり、限られた仕事しか身につかない傾向があります。

反面、バイオベンチャーではそもそも人が少ないので、大企業では複数の部門で行っている業務を1人から数人で担当することになります。

そのため、仕事の全体像が掴みやすかったり、自分の裁量で仕事ができるのでさまざまなことが身につきます。それらの仕事を通じて能力が認められると若くして役職がつくなどの出世をすることもあります。

また、トップとの距離が非常に近いので大企業では承認を得るのに何人もの管理職を通さないといけないような場面でもトップの承認ひとつで許可が下りることも多いです。

そのほかにも、中途採用に対してもある程度門戸が開かれているのも大きなメリットです。

特に博士号を取得後にポスドクなどの任期付きのポジションになり、正規職や企業経験がない場合でも正規職として採用されることがあるのは大きな魅力ではないでしょうか。

 

バイオベンチャーで働くデメリット

一方で、バイオベンチャーで働く大きなデメリットは新人教育や研修に期待できないことです。これは若い人ほど大きなデメリットとなります。

バイオベンチャーでは社員が少なく1人あたりの業務裁量が大きくなるため、新人教育や研修を行う余裕がない傾向があります。

研修はOJT( On-the-Job Training )を採用している企業が多いですが、実情として余裕があまりないので、目先の業務をただ指示どおりにやって覚えていく流れとなります。

そのため「なぜこの業務(実験の操作など)をやるのか」といった背景を学ぶ機会が少なく、結果として業務の本質がわからないただの作業者になってしまう場合があります。

また、専門的な分野の教育・研修以外にもお客様と打ち合わせなどをする場面での立ち振る舞いやメールの書き方といったビジネスマナーについても教わる機会がほとんどありません。

特にアカデミア出身の方に多い印象ですが、そもそもそういったマナーを身につけてる方が少なく、これらは経験値の少ない若い人ほど大きなデメリットとなります。

私が実際に遭遇したことのある事例

〇 まったく面識のない外部の人に「お疲れ様です」とメールを出す

〇 別部署に内線をかけるときに名乗らずいきなり用件を話し出す

など

 

他方で、組織制度や福利厚生についても整備されていない企業が多い傾向があります。退職金がないのはもちろんのこと、残業代が出なかったり、業務に対する評価(給与額など)も正当に評価されない場合もあります。

このような面は元々制度の整った大企業で長く働いていた方がベンチャーに転職をした際に強く不満に思われることが多いです。

そのほかにも、ミドルステージくらいまでの企業は会社設立から一度も黒字になったことがないということも多いです。そのため、一般の企業と比較していつ倒産してもおかしくないリスクが高い傾向があります。

 

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バイオベンチャーに「向いている人」と「向いていない人」

向いている人

〇 自分から勉強する意欲のある人

〇 さまざまなことに興味が持てる人

〇 キャリアプランを自分で考えられる人

向いていない人

〇 主体性のない人(受け身な人)

〇 決まったことしかやりたくない人

〇 新卒のような他社経験のない人

 

バイオベンチャーに向いている人

バイオベンチャーに向いているのは主体性と好奇心がある人です。

バイオベンチャーは人数が少ないため、基本的に余裕がありません。そのため一から丁寧に教えるということが難しいので、自分から積極的に学ぶことが必須となります。

また、大企業なら部門分けされているような業務でも人がいないという理由で本来の業務とは縁遠い業務も兼任することがあります。

私が実際に遭遇したことのある事例

〇 品質管理の人が設備管理や健康診断の取りまとめ業務などを兼任

〇 研究の人が製造を兼任(研究内容とはまったく関係ない製品の製造)

など

新入社員と言えど放置されることがあったり、本来の業務とは異なる業務を担当することもあるため、積極的に業務に関連することを学んだり、担当外のことにも興味を持つ好奇心などが必要となります。

キャリアプランに関しては一般の企業でも当てはまるかもしれませんが、会社が考えてくれるなんてことはありません。

日本のバイオベンチャーの状況的にいつ倒産してもおかしくない企業が多いので、異なる業務を通じて学んだことを自分なりに組み合わせて自分のキャリアプランを考える必要があります。

このようにバイオベンチャーは自分からさまざまなことを学んだり、学んだことを自分から活かせるタイプの人に向いています。

 

バイオベンチャーに向いていない人

バイオベンチャーは主体性がなかったり、決まった業務しかやりたくない人、新卒のような他社を知らない人には向いていません。

上でも述べましたが、バイオベンチャーは基本的に余裕がないので、一から丁寧に教えるといったことや一つの業務だけをずっと担当するといったことが難しい環境にあります。

そのため、受け身で指示がないと何もしないタイプではいつまでも一人前にならず、場合によっては上司やほかの社員から疎まれてしまう可能性があります。

また、世間で一般的とされているマナーを身につけていない人も一定数いるため、新卒のように他社を知らない人がそれが当たり前なんだと勘違いしてしまう可能性があります。

ビジネスマナーは自分でも学ぶことができますが、自分から学ぶ意欲がないと身につきません。

このように主体性がなく受け身な人や限られた業務しかやりたくない人、新卒のような他社を知らない人にはあまりオススメできません。

 

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まとめ

ここまでの内容でバイオベンチャーとはどのような会社でどんな状況にあるのか、知っていただけたのではないかと思います。

私自身バイオベンチャーを2社ほど経験し、そこでさまざまな良いところと悪いところを目にしてきました。

ここでは私の経験やバイオベンチャーに勤める知人の話をご紹介させていただきましたが、すべての企業には当てはまらないかもしれません。

しかしながら、少なからず当てはまる部分もあるのではないかと思っています。

 

本内容が科学を志す若者やバイオベンチャーで働いてみたいと思っている方、またその彼らを支えるご家族の参考になれば幸いです。